因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
デジタル社会になってもそういった心遣いはとても素敵だと思うし、結婚式のお礼なら妻となった私ももちろん当事者なので、礼状を送ることに異論はない。
しかし、手書きでかしこまった手紙を書くという機会が、実は初めてだった。
メールで文章を打つのとは勝手が違うので、招待客のリストを見ながら慣れない筆ペンで綺麗に文字を書くのにかなり苦労した。
それで、集中力が切れて居眠りしてしまったらしい。
朝も寝坊したのに、なんたる失態……。
光圀さんが電気を点けてくれたようで部屋の中は明るいけれど、障子の向こうはすでに真っ暗だ。
「い、今、何時でしょう?」
「慌てなくていい。夕方六時半だ。礼状なら後で俺も手伝うから」
「すみません……」
醍醐流香道、家元の妻、その名に恥じない女性になりたい。
そう思っているのに気持ちばかり先走って、実際は空回りしている自分が情けない。
「和華が一生懸命だったことはわかっている。礼状に集中していたから、俺からの連絡にも気づかなかったんだろう?」
「えっ?」
光圀さんから連絡があったの?
すぐさま便箋の脇に置いてあったスマホを手に取ると、彼からのメッセージが三件。