因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
【綺麗だな、花】
【帰ったら話がある】
【今から帰る】
ほぼ用件のみのそっけない短文だが、それが逆に光圀さんらしくてほっこりした。
スタンプより自分の手で打った文字がいいと、彼が言った理由がわかる気がする。
「すみません、気づけなくて……。それで、お話というのは?」
「ああ、そうだ。和華に確認したいことがある」
光圀さんが正座をしたまま、まっすぐに私を見る。改まった雰囲気に私の背筋もぴっと伸び、緊張しながら彼の言葉を待った。
「きみは、この結婚生活で俺との肉体関係を望んでいるか?」
「へっ……?」
今、肉体関係って言った? 自分の耳を疑い、光圀さんを凝視する。
和服姿で正座をする美しい姿勢、上品で凛々しい顔立ち。
肉体関係だなんて言葉とは対極にいるようなたたずまいに、ますます彼の発言がわからなくなる。
「俺は、和華が望むものはすべて与えたいと思っている。そのために、きみを娶った」
光圀さんが、静かに語り始める。
漆黒の双眸に結婚式の日と同じような深い後悔、そして罪悪感を滲ませながら。