因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「私、光圀さんとの結婚は心から望んだものでなくても、なにかの縁だと思っています。そうじゃなければ、一般庶民の私なんか、光圀さんのような素敵な人の妻になんて絶対になれません。まして、こんなに近くで触れてもらうなんて……」
頬に添えられた彼の手に自分の手を重ね、静かに目を閉じる。
温かくて、胸の奥がキュッと苦しくなる。
男の人の手だから? それとも、相手が光圀さんだから?
今はまだわからないけれど……私、この感覚をもっと育ててみたい。
「光圀さん」
重なり合う手をゆっくり下ろし、瞼を開いて彼を見る。
「私、あなたと恋がしたいです」
光圀さんは瞠目し、戸惑ったように瞳を揺らした。
朝、太助くんに言いかけた〝不純な動機〟というのもこのことだった。
彼は勝手に色っぽい方向に解釈してからかってきたけれど、私の望みはもっと単純だ。
「私たちの結婚には色々な事情が絡み合っていますけど、せっかく縁あって夫婦になったんです。光圀さんの言うような疑似恋愛ではなく、できることなら本気の恋ができたらなって思ってるんですが……私なんかが相手では無理ですか?」