因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
勇気を出して言ってみたものの、言葉尻はだんだん小さくなった。
自分でいうのもなんだけれど、私の容姿はごく平凡、取り立てて秀でた芸や魅力も皆無だ。
光圀さんにとっては、心ない肉体関係を提供する方が楽だったかもしれない。
でも、過去の後悔や贖罪の気持ちだけで一緒にいるよりは、お互い歩み寄る努力をしながら、明るく楽しく過ごした方がいいと思うのだ。
「和華」
自信なく俯いていたら、名前を呼ばれて顔を上げる。
と、同時に、強い力で両方の肩をぐっと掴まれ、光圀さんの顔が眼前に迫っていた。
「み、――」
光圀さん、と口にしようとした瞬間、彼の着物から匂い立つ白檀の香りに包まれ、強引なキスに声を奪われた。
嘘。どうして、キスなんて……。
驚いて見開いた目には、目を閉じた光圀さんの美しい顔がハッキリと映る。
瞬きもできず、押しつけられた唇の甘い感触に顔中が熱くなる。心臓はドキドキ暴れ、全身が拍動しているような錯覚すら覚えた。
短いようで長かった口づけが終わると、光圀さんはそっと顔を離し、至近距離で私の瞳を覗いた。
「口づけすら拒否されたら、恋愛どころではないと思ったが……どうやら、俺に触れられるのは嫌じゃないようだな」