因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
違う。私の望みはそんな苦しい恋愛じゃない。
光圀さんを楽にさせてあげたいのに、どうしてうまくいかないの。
悔しさから下唇を噛み、俯く。光圀さんはそんな私の頭に手を伸ばすと、後頭部をぐっと引き寄せて自分の胸に抱いた。
「今夜から寝るときは俺の部屋に来るといい。すぐにどうこうはしないが、経験がないならなおさら、同じ部屋で眠ることに慣れておいた方がいいだろう」
「はい……わかりました」
光圀さんの鼓動は、穏やかで一定だ。愛する人を抱きしめた時のそれではないと、恋愛未経験の私にだって想像がつく。
どうしたら、彼の本音が聞けるかな。
毎日同じ部屋で寝ることで、少しは心が近づけますように――。
夕食とお風呂を済ませた後、部屋着のマキシワンピースに身を包んだ私は、光圀さんの部屋の前にいた。
一緒に寝るだけとはいえ、男性と同じ布団に入るなんてよく考えたらものすごく恥ずかしい。どんな顔して寝ればいいんだろう……。
ソワソワしつつも、意を決して深呼吸。襖の前で、「光圀さん、和華です」と声をかけた。
「どうぞ」
中から光圀さんの落ち着いた声がして、襖を開ける。
部屋の中心に並んで敷かれたふたり分の布団が嫌でも目に入った。