因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
醍醐家はなにを隠そう、地元屈指の大地主。
光圀さんは醍醐流の家元として香道を世に普及させる活動で収入を得ているほか、先祖代々引き継がれてきた不動産収入もある。
しかし彼自身はお金に無頓着であり、経理はすべて専属の税理士に任せている。
結婚前の顔合わせの際、母が遠慮がちに年収を尋ねたら、『申し訳ありません。修行に明け暮れるばかりなので、把握しておりません』ときっぱり言い切っていた。
代わりに後日税理士さんが連絡をよこし、光圀さんには香道家としての収入がなくとも、一生遊んで暮らせるほどの資産があるのだと知った。
『毎日コマネズミのように働く俺たちって……』
父がそう言って、しばらく落ち込んだのは言うまでもない。
つまり光圀さんは桁違いの資産家である。しかし、出資は無条件というわけではなかった。
『一式問屋に出資する代わりに、娘の和華さんと結婚させてください』
父から店が経営難だと相談を受けた際、光圀さんはそう言って深々と頭を下げたそうだ。
父は腰を抜かすほど驚き、『親から見れば確かにかわいい娘ですけど、醍醐さんのところに嫁ぐなんて、身分違いもいいところです』と、慌てて断ったらしい。
しかし、光圀さんがあまりに必死で食い下がるものだから、出資してもらう恩もあるしと、最終的には承諾した。