因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
『和華さんから夜這いをかけてごらんなさい』
初めての私がそんなことをしたら、光圀さんも驚いてペースを乱すだろうか。
ぼんやりそう思ってから、すぐに「無理……!」と口に出して布団を頭からかぶった。
絶対うまくできなくて、光圀さんに引かれて終わりだ。
光圀さんはやっぱりたくさんの女の人を知っているのかな。今までどんな人とお付き合いをしてきたのかな。
彼の隣に立つ女性を想像したら、ポンと頭に浮かんだのは楓子さんの姿。
想像の彼女は、光圀さんにしか見せない美しい笑顔で、彼の肩にしなだれかかる。
年が離れているとはいえ、楓子さんは美しいし、光圀さんと並んだ様はきっと私よりも画になるだろうな……。
うう、ますますモヤモヤして眠れない。
なんとか思考を排除し、固く目を閉じる。しかし、いつまで経っても眠気が訪れそうにない。壁の古い掛け時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる。
何十分そうしていただろう。やがて、廊下からひたひたと素足の足音が近づいてきた。
光圀さんが戻ってきた。そう思うと急に緊張して、とりあえず寝たふりをすることに決める。
仰向けで目を閉じていると襖が開いて、彼が室内に入ってきた。