因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「光圀さん、額に傷のある私は、醜いですか?」
暗い部屋でも、近くにいるので傷跡は見えるだろう。
顔を上げた彼は、苦しそうな表情でジッと私の額を睨む。
「そんなはずはないだろう。人の魅力は容姿だけで決まるわけじゃない」
「だったら、どうして〝これ〟に固執するんです? 私、ずっと罪の意識に苛まれている光圀さんを見ているの、つらいです。結婚して甘やかしてもらったって、あなたが幸せじゃないのに、私だけ幸せになれるはずないじゃないですか」
「和華……」
険しかった光圀さんの表情がわずかに緩む。
私は前髪を上げていた手を下ろして彼に顔を近づけると、衝動的に唇を重ねた。
触れるだけのキスは一瞬だったけれど、私は緊張と羞恥とで真っ赤になっていたと思う。
それでも、伝えたかった。
私は光圀さんと本物の夫婦になりたい。そして、ふたりで一緒に幸せになりたいのだと。
閉じていたまぶたをゆっくり開くと、光圀さんは目を見開いたまま硬直していた。
恋愛初心者の私に唇を奪われるとは、夢にも思わなかったみたいだ。