因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「ごめんなさい、驚かせて」

 彼の反応に若干傷つきながらもそう言うと、スッとこちらに伸びてきた彼の手が、私の顎を軽く引き上げた。

 有無を言わさず真剣な眼差しに射貫かれ、どきりと胸が鳴る。

「謝る必要はない。俺たちは夫婦だろう? 愛し合うのはまだこれからの、未熟な夫婦だが」
「光圀さん……」

 それはいつもの義務感? それともあなたの本音?

 問いかけるように上目遣いで瞳を覗いたら、光圀さんは顎から手を離し、頼りなげに口を開く。

「俺は、和華への罪を一生背負っていくものだと覚悟していた。しかし、きみにとってそれは不本意なこと……。正直、簡単に心の折り合いはつかないが、勇気を振り絞ってかわいらしい口づけをしてくれたきみの思いに、応える努力はしたい」

 真摯な目をした彼と視線が絡み、胸が、トクンと優しい音を奏でた。

 うれしい。光圀さんの口から、初めて前向きな言葉が聞けた。

 かわいらしい口づけ、という表現は子ども扱いされているように思えなくもないけれど、なにも行動しないよりは、きっと彼の心に近づけた。

「和華」
「はいっ」

 布団の上で居ずまいを直し、まっすぐに光圀さんを見つめる。

 彼もまた美しく背筋を伸ばして正座をし、凛とした声で告げた。

「不出来な夫かもしれないが、改めてよろしく頼む」
「こっ……こちらこそ、よろしくお願いします!」

 お互いに頭を下げ、夫婦の再スタートを誓う。

 顔を上げると光圀さんはやわらかく微笑んでいて、胸の奥がまたキュッと痛くなった。
  
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