因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
彼女の存在で変わっていく自分――side光圀
和華との結婚式から二週間。師走を迎え、醍醐家の庭には椿が咲き始めた。
寒々しい景色の中でも、真っ赤な色を湛え咲き誇る椿。縁側からその花を見るたび、俺は自然と和華を連想した。
伝統やしきたりを重んじ、家族以外の人間も生活している醍醐家の独特な環境は、彼女にとって決して居心地のいい場所ではないと思う。
しかし、和華は誰とでもすぐに打ち解け、いつでも明るく振舞っている。
その姿を見るたび、色彩のなかった俺の心に、色鮮やかな花が開くような感覚を覚える。
彼女とたわいのないメッセージをやり取りすることにも慣れ、今ではスマホを持ち歩いていないと落ち着かなくなった。
【今日は蔵掃除のお手伝いをします! 宝物がたくさんありそう】
【幽霊が出るかもしれないぞ】
【出たとしても、光圀さんのご先祖様でしょう? それなら怖くないです】
そんな和華のメッセージを呼んでいる時や、返事を考えている時。それから、実際に和華と話している時、俺はどうやら無意識に微笑んでいるらしい。
指摘してきたのは最も行動をともにする機会の多い一番弟子の伊織……ではなく、常にズケズケとした物言いをする二番弟子、太助の方だ。