因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
太助がお節介にそんなことを言うと、ちょうど食堂の扉が開いて、見慣れない着物姿の和華が姿を現した。
着物の淡藤色が視界に入っただけで、にわかに鼓動が乱れる。
「ここにいたんですね、光圀さん。これ、どうですか? 全部自分で着付けました!」
その身にまとう着物の上品さとは対照的に、子どものようにはしゃいで俺たちのもとへやってくる和華。
しとやかなまとめ髪もなかなかさまになっているが、洋服を着ている時と同じように動き回る彼女に、つい苦笑がこぼれる。
「せっかく綺麗に着付けてあるのに、そう暴れたらすぐに着崩れるぞ」
和華の前に歩み寄った俺は、床に膝をついて身を屈めると彼女の着物の脇、身八つ口にスッと手を入れる。
そして緩みかけていた衿を引っ張って整えると「よし」と呟いて立ち上がった。
満足して和華を見下ろすと、彼女はなぜか顔を真っ赤にして俺を睨んだ。
「い、いきなり着物の中に手を入れないでください! びっくりします!」
「……なにを誤解している。こんな場所で脱がせるわけがないだろう」
「それはわかってますよ! 光圀さんこそ、こんな場所で『脱がせる』とか言わないでください! っていうか、まだ一度も脱がされたことありませんから……!」