因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
……と、完全に事後報告で父からその話をされた私は、父以上に驚いた。
光圀さんは店のお得意様でもあるし、彼の住む屋敷も近所にあるので、まったく知らない間柄というわけではない。というかむしろ、一時期は仲のいい兄妹のように過ごしていた。
けれど、私が中学二年の時。彼との間でちょっとした事故があって、それ以降彼はあまり店に足を運んでくれなくなった。
聞香で使用する香木など必要な買い物も、彼の弟子か家政婦が代理で済ませていく。
とても寂しかったけれど、元々住む世界が違う人だし……と、それ以降は彼の活躍を陰ながら応援する程度の繋がりになった。
そんな状態で舞い込んだ、突然の結婚話。正直混乱したけれど、後から落ち着いて考えてみると、光圀さんが結婚だなんて言い出す理由は、例の事故のせいではないかと気がつく。
彼は、私の人生に傷をつけたと思い込んでいる。
私を娶ることで、その責任を取ろうとしているのだ。
そんな義務的な結婚を、光圀さんは本当に望んでいるのだろうか。
正直葛藤はあったけれど、実家の経営状況を思うと断ることはできず、粛々と結婚に向けて準備をし、今日を迎えた。