因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「でも、放送の後で来たお客さんはお店の汚さなんてあまり気にせず、煎餅の美味しさに揃って感動してました。リピーターの方もたくさん増えて、店のご主人は忙しくて目が回りそうって嘆く反面、その顔はとってもキラキラしていました」
当時を思い出したのか、和華まで嬉しそうに顔をほころばせて話す。
その笑顔を見ていると、俺の中に、またひとつ新たな花が開いた。
和華が運んできた、温かい気持ちに誘われるようにして。
「だから、きっかけはどんな形でも、光圀さんが全身全霊を傾けている醍醐流香道を広く知ってもらえるなら、やってみたらいいと思います。光圀さんの見た目につられただけの女性がいたとしても、香道に興味を抱いてくれたら結果オーライというか、むしろしてやったりじゃないですか」
親指を立てて悪戯っぽく笑った彼女につられ、俺も思わずふっと笑った。
してやったり、とは面白いことを言うものだ。その明るい抜け目のなさ、さすが、実家で商売をしていただけのことはある。
「ただ……」
「ただ?」
突然、和華が言いにくそうに口ごもるので、首を傾げた。
和華はちらりと上目遣いで俺を見ると、再び視線をそらして呟いた。