因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
香席で深まる夫婦の絆
十二月中旬の土曜日。予定通り、醍醐家で香席が開催されることとなった。
招待客は、日本文化の研究をしている大学教授や時代小説を手掛ける作家、光圀さんの書道の先生など、立派な文化人の方ばかりが六名。
その中にひとりだけ若い女性のお客様がおり、彼女も香道家だった。
光圀さんとは別の流派となる〝空木流〟を継承する家元で、名を空木鞠子さんと言う。
タクシーで到着した空木先生さんをひとりで出迎えた際、私はその斬新なファッションに思わず目を奪われた。
光圀さんと同年代くらいの彼女は、太いストライプの着物に洋風のレースやリボンを合わせ、頭にはベレー帽をかぶっている。
一張羅の着物をようやくスムーズに気つけられるようになった初心者の私とは、似ても似つかないお洒落な着こなしだ。
「はじめまして、万斎の妻、和華と申します。本日はお越しいただきありがとうございます」
「空木です。お招きありがとうございます」
空木先生はベレー帽を頭から取り、胸に抱いてお辞儀をした。赤いメッシュの入ったストレートのボブヘアが、さらりと揺れる。