因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
改めて自分のお椀に視線を落とすと、立派な蛤がふたつ、開いた貝を四葉のように重なり合わせて入っている。
どちらの貝もほとんど同じに見えるけれど、目を凝らせば確かに曲線のカーブが微妙に違っていた。最初に気づいた人はすごいな。
「……まぁ、だからどうというわけでもないが」
ロマンチックな雑学に感銘を受ける私をよそに、正面に向き直った光圀さんはそれまでと同じようなポーカーフェイスで、吸い物に口をつける。
昔からあまり笑わない人だとは知っているけれど、結婚したからにはもう少し距離を縮めたい。
義務的な結婚だったとしても、家族として同じ家で暮らすんだもの。夫婦らしくなっていきたいと望むのは、悪いことじゃないよね……?
膝の上で、ギュッと手を握りしめた。
私がこの結婚を受け入れたのは、なにもすべてが実家のためというわけではない。
過去に縛られている光圀さんを、どうしたら楽にしてあげられるのか。彼との結婚生活を通して見つけられたらいいと、無謀にも微かな望みを抱いているのだ。
「私たちも、蛤のようになれたらいいですね」
そう言って、遠慮がちに光圀さんの顔を見つめる。
すると、お椀を置いた彼はキュッと唇を引き締め、真面目な瞳で私を見据えた。