因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
……もっと、彼とキスしたい。
そんな衝動に突き動かされるようにして、私は不機嫌なフリを継続する。
「まだ、全然です」
「そんな蕩けそうな目をして。俺の理性を試しているんだろう。いいさ、今夜はとことん自分を鍛えるとしよう」
光圀さんは覚悟を決めたようにそう言うと、再び私の唇をふさぐ。
触れるだけだった今までのキスとは違い、食むような動きで私の唇と戯れ、時折チュッと濡れた音を立てて吸った。
夜の母屋には、私と光圀さんのふたりきり。しんと静まり返った部屋に、キスとお互いの吐息が重なり合う音だけが響き、耳をふさぎたいほど恥ずかしい。
「和華……」
「んっ、光圀、さん……」
キスの合間、かすれた声に名前を呼ばれると、胸がきゅっと締めつけられる。
好きだと言われたわけじゃない。それでも、光圀さんの中でこの結婚の意味は少しずつ形を変わってきたと信じたい。
私はそんな一心で、ぎこちなくも一生懸命、彼のキスに応える。
その夜は、初めて光圀さんと同じ布団の中に入り、彼の腕の中で安らかに眠った。