因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
サンタクロースの贈り物
香席の日以降も、醍醐家の嫁として忙しない日々は続いた。
結婚式の礼状に悪戦苦闘した記憶がまだ新しいが、その後すぐにお歳暮の手配、こちらが頂いたお歳暮の礼状の用意、そして来たる新年に向けて百枚以上にわたる年賀状を手書きするという作業が続き、文字通り師走らしい日々を過ごした。
そうして忙殺されているうちに一週間が過ぎ、気が付けばクリスマスイブだった。
しかし、光圀さんがクリスマスを意識しているそぶりは見られない。
香道家として仏教に造詣が深いこともあり、キリスト教のお祝いには無縁なのかもしれない。
私も特別な期待を抱くのはやめ、その日は地元の友達と会う予定を入れた。
その友達は結婚式にも来てくれたのだが、それ以降はバタバタして一度も会っていなかった。
話の場に選んだのは、カフェやレストランではなく、浅草寺周辺を走る人力車の上。
人力車はなにも観光客だけのものではない。せっかく浅草という情緒ある街に住んでいるのだからと、私とその友人は時々人力車を利用して、景色を楽しみながら近況報告をし合う。