婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 整理できない頭で口をパクパクさせている俺の目の前で、セバスが侍従のクリスと護衛騎士のジャックに声をかけている。名前を呼ばれた二人は、尻尾を振る子犬の如く喜々とした様子でディアナの元へと駆けつけていた。

 俺のことは無視なのか? 
 きちんと説明してほしい。そう口に出そうにも誰も俺のことなど気にしていない。みんなローラの手作りのお菓子のことに夢中になっている。

 何も話すことはないとばかりに部屋から出て行こうとしたディアナが、はたと俺の方へと振り返った。目が合った。何か言いたげな瞳。

 まさか、このまま帰ったりはしないよな。この際だから、はっきりと説明してくれ。奥歯に物が挟まったような物言いは妙な憶測を生むじゃないか…… 

 
「……ディアナ」

「レイニー」

 ゴクリと唾を飲み込んだ。聞く準備は出来ている。

「一言、言っておくわね」

 俺は大きく頷いた。


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