婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
怖い。
オレンジがかった金髪が風になびき陽にあたってキラキラ輝いていて、歩く姿はさながら女神のよう。
けれども、獲物を捉えたかのような鋭い目つき、口角を上げニヤリと嗤う真っ赤な唇がそれを打ち消します。
恐怖。
この場に縫い留められて動けない私は、ビビアン様にとっては格好の獲物なのでしょうか。
ドンドンと近づく距離に避けることも逃げ出すこともできずに恐怖に怯えるだけ。
どうか、気づかずに、どうか無視してくれますようにと心の中で祈りましたが、私の願いは届きませんでした。
「お久しぶりね。フローラ様」
ディアナには目もくれず、目の前にやってきたビビアン様の華やかな笑顔。
背後には友人なのでしょう、三人ほど控えています。
どなたも美しい方ばかり。何が起こるのか興味津々で見つめていました。