婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 

 恐怖に背筋が凍りました。
 ガタガタと震えそうになる体を抱きしめて押さえ込み、なんとか床を踏みしめて立っていました。

 ビビアン様が面白そうに私の反応を窺っているのがわかります。
 怯える私の姿はさぞ滑稽に見えるのでしょう。
 獲物をいたぶるかのような鋭さを増した目が私を捉え、勝ち誇ったように冷笑を浮かべました。
 
「ディアナも一緒にね。わたくしたち幼馴染ですものね」

 今度はディアナに向かって話しかけたビビアン様の表情が、親しい者に向ける顔へと変わりました。 
 
「ええ。そうでしたわね。また、是非ともご一緒したいわ」

「ディアナなら、そういってくれると思ったわ。では、ごきげんよう」

 ビビアン様は言いたいことを言ってすっきりしたのか、ディアナから望みの返事を聞いて満足したのか、令嬢たちを伴ってこの場を去って行きました。

 何はともあれ、ホッとしました。
 しばらくすると、血の気が引いて冷たくなっていた指先に、やっと熱が戻ってきました。



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