婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 ドレスをつまんだ手に悔しさを滲ませて、それでも公爵令嬢の矜持を保つように華麗なカーテシーをして去って行きました。

 彼女の背中を見送り姿が見えなくなったことを確認すると、やっと弛緩した空気が流れました。

「けっこう、しつこかったわね。ランディー様もギリギリのところを攻めたから、乗ってきたらどうしようかと思ったわ」

「あれで乗ってきたら、まだ攻めるつもりだったけどね」

「そうなの? そうならずにすんでよかったわ。あそこで引いて命拾いしたんじゃないかしら」

 世間話でもしているように軽く話している二人だけれど、会話の内容は笑えないわ。

「公爵様ありがとうございました。ディアナもありがとう」

 命拾いをしたのは私も同じかもしれません。
 ビビアン様のあの調子では、いつまでも納得してくださらなかったでしょうから。二人のおかげで助かりました。


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