婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「いつって、たった今よ。ちょうどビビアン様がいた頃かしら? 休憩するために来てみたら、彼女の声が聞こえたじゃない? 何事かと思って顔を出したのよ」

「……」

 動じることなくスラスラと状況を説明するディアナに、疑惑の目を向けているのがありありとわかります。
 ですが、レイ様、些末事は気にせずそのまま信じましょう。その方が私達のためかと思います。

 心の中の声。さすがに面と向かっては言えません。

「余計なことをしてしまったかな?」

 穏やかでいて飄々としたつかみどころのない公爵様に、何度か口をパクパクさせていたレイ様でしたが、諦めたように大きく大きく息を吐いて目を瞑った後「わかった。ありがとう」と言うに留めました。

 本当はなにかしら言いたそうでしたけど、何を言ってもディアナにはかなわない気がします。公爵様にも。
 
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