婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 二人の声が突然止んだ。

 うっかり音を立ててしまったから、周りを警戒しているのかもしれない。動けば居場所がわかる。息をひそめてじっとしていると、二人が動き出すのがわかった。
 見つかる覚悟をしていたけれど、近づくどころか足音が遠くなっていった。
 見つからないように、さらに奥に逃げたのね。

 密会。逢瀬。

 考えたくもない言葉が頭に浮かんだ。

 逃がさないわ。
 このまま、引き下がったりしない。

 フローラ。
 レイニー殿下と仲良くするなんて、許さないわ。

 まさか……結婚の約束なんて、していないわよね。愛称で呼ぶ二人の姿がちらついて、どす黒い何かが全身を渦巻いていく。

 王子妃になるのはわたくしよ。王子妃に相応しいのはビビアン・シュミット公爵令嬢なの。わたくししかいないのよ。

 逃がさない。

 このままでは腹の虫がおさまらない。一部始終を見てやる。

 嫉妬心に駆られ好奇心に駆られ、足音を立てないように気をつけながら、あとを追っていった。


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