婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 レイニー殿下のお相手はわたくししかいないと自負していたわ。それは今でも変わっていない。

 けれども

『本当はファーストダンスだって、ローラと踊りたかったんだ。二曲目だって、三曲目だって、本当はずっとローラと踊りたかった』

 盗み聞きだったけれど、こんなことを言われたわたくしはどうすればいいの?

 わたくしは眼中になかったって言われているようなもの。

 殿下とファーストダンスを踊って舞い上がっていた気持ちも、もう一度、ダンスに誘ってくださると心待ちにしていたことも、わたくしを選んでくださると確信していた思いも……

 最初から好意のひとかけらさえなかったのだと思い知らされた、あの瞬間。

『私もレイ様ともっと踊りたかった。でも……』

 わたくしだって踊りたかったわ。ずっと待っていたのですもの。わたくしに権利があるはずよ。

 そして、あろうことか、二人は星空の下で踊りだしたのよ。レイニー殿下の口から紡ぎだされる曲に合わせて踊るフローラ。
 なに、その楽しそうな顔。なに、その幸せそうな顔。

 幸福な時間を過ごすのはフローラではなく、わたくしのはず。

 おかしい。

 何かが間違っている。

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