婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「あら? ビビアン? その手に持っているのは扇子かしら? 随分と短くなっているけれど、どうしたの?」
不意に聞こえた声に我に返った。
右手に握りしめていた扇子に気づいたお母様が尋ねてきたわ。膝の上に置いていた右手に目をやるとボロボロになった扇子が目に入った。ずっと握りしめていたんだわ。気付かなかった。
「ごめんなさい、お母様。少し力を入れてしまったら折れてしまいましたの。せっかく買って頂いたのに粗末にしてしまって申し訳ありません」
わたくしは目を伏せて謝ったわ。
二人だけの空間で二人だけの会話。甘ったるい恋人同士のような仲を見せつけられて、はらわたが煮えかえるくらいに悔しくて憎くて、持っていた扇子に力が入ってしまった。
でもあんなに簡単に折れるとは思わなかった。
扇子って案外もろいものなのね。