婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「いいのよ。ドレスと一緒に新調したはずなのに、不良品だったのかしらね。また新しいものを買えばよいわ」
「お母様、次は丈夫で長持ちするものがいいですわ」
「そうね。よく吟味して買いましょう。わたくしも新しい扇子が欲しいところだったのよ。ちょうどよかったわ」
お母様は折れた扇子などには興味はなさそうで買い物をすることに頭がいっぱいの様子。折れた理由を聞かれても答えに困ったから助かった。怒りにまかせて真っ二つにしたなんて言えないわ。
自嘲気味に口の端を持ち上げた。
扇子が折れたせいで、二人に見つかってしまったけれど、むしろチャンスだと思ったわ。
ここで顔見知りになっておけば、また会う機会が訪れるかもしれない。
わたくしのことを知ってもらえれば、フローラよりもずっと魅力的なことがわかるわ。王子妃に相応しいのはわたくしだときっとわかってもらえる。チャンス到来だと思ったのに。