婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
テンネル侯爵夫人side①
「お姉様。わざわざ来ていただいたのに、申し訳ないわ」
「いいのよ。病気なら仕方ないですものね」
テラスでお茶を飲みながら謝った。
今日はリリアさんの侯爵夫人教育の日。
チェント男爵家から風邪のために休むと知らされたのは、少し前の事。姉への連絡が間に合わなかった。
「いいじゃない? たまには姉妹でゆっくりとお茶を楽しむのもよいわ」
「そうね」
昨日の激しい雨とは打って変わったような快晴。晴れ渡った蒼穹には雲一つない。眼前の花々には、まだ夕べの名残の水玉が太陽の光に輝いている。
姉のエレガントな仕草には毎回見惚れてしまう。
そろそろ中年期に差し掛かる年齢だけれど、手入れの行き届いたすべすべの肌にはほんのりと薄化粧。それだけなのにビューティフル。爪のエイルもおしゃれ。艶のある金色の髪は纏めただけなのに品がある。過度に着飾らないシンプルなドレスもよく似合っている。
背筋を伸ばした姿勢が凛としていて、揺るぎのないまっすぐな生き方を貫く美しい姉はわたくしの憧れ。