婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 わたくしは姉妹のよしみでお願いしたけれど、初日で後悔したわ。何も躾けられていない。元平民だからということを差し引いてもマイナスだった。

 食事のマナーも教養も何一つ満足にできない。男爵令嬢となって三、四年は経つらしいのに……
 チェント男爵家はマナー教師などつけなかったのか尋ねてみると、長続きしなかったと言われたわ。

 それには唖然とするしかなかった。


「そうね。あなたがわたくしに気を遣うのもわかるわ」

 姉は微笑んで紅茶を一口飲む。

 乾いた風が花々をそっと撫でていくと水玉が揺れながら落ちていった。


< 355 / 835 >

この作品をシェア

pagetop