婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「もう? まだ、時間には早いのではないかしら? せっかちね」

 アンジェラ様の声がしました。顔を上げると、侍女長が耳のそばで何事か囁いているようでした。
 アンジェラ様の目線の先には時計があります。
 いつもはリッキー様の学習時間のはずですが、久しぶりだったせいもあり今日は早めに切り上げたのです。

「西の宮からの使いのようなの。時間まで待たせるわ。だから、フローラちゃんはゆっくりしていていいわよ」

 西の宮……
 緊張を伴ってドキッと心臓が跳ねました。

 レイ様。

 約束の時刻までに気持ちを整えなくては、そう考えるものの久しぶりに会えると思うだけで、ドキドキと鼓動が早くなるばかりで、ちっとも落ち着きません。

 会話もそぞろに時計の針とにらめっこしながら、お茶の時間を過ごしました。

  
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