婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「ローラ。今日はゆっくりできるよね?」

 抱きしめたまま、レイ様の声が降ってきました。
 ゆっくり……

「はい」

「この前みたいに、急に帰るのはナシだよ」

「はい」

 また、念を押されました。よほどショックだったのかしら。本当に申し訳なかったわ。

「仕事も絶対に入れないから」

「は……。いえ、仕事はしてくださっても」

 仕事は大事ですから、緊急なものであれば仕方がありません。

「いやだ。今日の分は終わらせてるから、絶対に受け付けない」

 駄々をこねる子供のようで、可愛らしいレイ様。

「わかりました。今日はゆっくりとお付き合いいたします。レイ様、よろしくお願いします」

 最後かもしれないですものね。レイ様と一緒にいたいのは私の方だわ。
 ゆっくりと、時を刻むようにレイ様との時間を慈しむように大切にするわ。

「うん。約束だからね」

「はい」

 私の返事にホッと安心してくださったのか、やっと、腕の中から解放されました。

 人肌の体温がなくなった体にちょっとだけ淋しさを感じてしまいましたが、それもまた贅沢な事だったのだと思い直しました。

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