婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
素材選びもそうですが、私の料理には極力油を抜いて消化に良い調理方法でした。
できるなら、厨房に行ってお礼を述べたいくらいですが、それはいくらなんでも図々しいお願いでしょう。最後かもしれないと思うとすべてを目に焼き付けておきたい気持ちになります。
「そこまでわかるんだね。料理人冥利に尽きるだろうな。シェフ達も感激すると思う」
「喜んでくださると嬉しいわ」
最後の晩餐。笑顔で終わりたい。瞳が涙で滲むのを抑えました。
「そういえば、俺にお菓子を作ってくれる約束がまだだったよね?」
ブルーベリータルトの甘酸っぱい美味しさを堪能していた時です。思い出したように尋ねられてびっくりしました。まだ有効だったのですか?
約束した日から数週間経っていますから、もうないものと忘れていらっしゃるだろうと思っていました。