婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
伝わらなかったみたい。
でも、私の体調を慮って下さるレイ様。優しすぎるわ。
このまま、体調不良のせいにしてうやむやにしてしまうのもいいのかもしれない。なんて狡いことを考えてしまう。レイ様だって会わなくなれば、私のことなどすぐに忘れてしまうでしょう。
「おいで」
いつの間にか隣に座っていたレイ様が手を広げていました。
「おいで」
広げられた胸の中に吸い込まれそうになりましたが、思いとどまりました。
今までだったら何も考えず飛び込んでいたかもしれません。なぜそんなことが出来たのか、自分の行動の無謀さに羞恥心がこみ上げてきました。
「いつもなら、来てくれるのにどうしたの?」
様子がおかしいと頭を捻るレイ様と自覚した思いに戸惑う私。
業を煮やしたのかレイ様は自分から近づくと私を抱きしめました。
シトラスの香りに包まれて腕の中に閉じ込められて、そんな行為に喜ぶ私がいる。振りほどけない私がいる。