婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「申し訳ありません。お受けできません」
自分の思いを断ち切るようにきっぱりと答えました。
レイ様の瞳が驚愕に見開かれて失望に染まっていく。悲哀に満ちた顔に心が痛む。
レイ様にはもっと相応しい方がいるわ。私でなくてもいい、私なんかよりもっと相応しい方がいる。気の迷いよ。レイ様は勘違いしていらっしゃるのよ、きっと。だから、すぐに目が覚めるわ。私のようなつまらない娘よりもお似合いの令嬢がすぐに見つかるわ。
「なぜ? ローラは俺の事をどう思っている? 正直に答えて」
掴まれた肩に力がこもります。今、目を逸らしてはいけない。
「お優しい方だと思っております」
「それだけ?」
私はこれ以上は言葉を紡げず、こくりと頷きました。
心は泣いているのに、こんなに冷静に返事ができるのはどうしてなのでしょう。
血の気を失った冷たい指先を握りしめて気丈にふるまわなければ。
泣いてはいけない。