婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「お気持ちはわかりますが……」

 だったら、黙っていてほしいとは思うが、言葉には出さなかった。すでにセバスの姿はなかったから。

「はあ」 

 何度目かわからない溜息が零れる。
 前日までに仕事を終わらせて、ローラを迎えるのが日課になっていた。
 今日だってそうだ。リッキーの所には行っていると聞いていたから、もしやと思い迎えをよこしたのだが、結局は、待ち人来たらず。
 

「殿下、暇そうですね。ゆっくりなさるのもいいですが、仕事をなさってもいいのですよ。書類はたくさんありますから」

「いやだ」

「殿下……」
 
「今日の分は昨日仕上げてしまったし、休ませてくれ」

 来るわけはないとは思っていても待ってしまう。もしかしたら、気が変わってこちらに来てくれかもしれないと、淡い期待を寄せて。

 
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