婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「レイ様、起きてください。ここで、寝てはダメですよ」
跪き、声をかけます。
「……」
返事はありません。微動だにしないレイ様。ぐっすりと寝ていらっしゃるみたい。
「レイ様。レイ様」
声をかけても起きる様子はないので、仕方なく肩に手をかけて少しだけ揺さぶってみましたが、熟睡しているのか瞼一つ動きません。疲れていらっしゃるのかもしれません。
閉じた瞳には長いまつ毛。スッとした鼻梁。弧を描いた艶のある唇。精巧なお人形のように整った容姿は寝顔も美しい。
起こすことを諦めてしばし見つめてしまいました。
頬にかかった髪の毛をもとに戻そうとそっと触れると頬の滑らかな感触に心が震えドキドキしてきました。
今日に限って人払いされたのか誰もいない室内。
今だけ……
起きる気配のないレイ様に魔が差したのかもしれません。