婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
呼んでも聞こえるのは規則正しい呼吸だけ。
震える手で頬に触れる。
いけないことをしているのはわかっているのに、止められなくて。
『大好きだよ。愛している』
先ほどのレイ様の言葉が甦りました。
真剣で熱を孕んだ瞳が忘れられなくて、伝えられずにはいられませんでした。
今だからこそ言える。
自分の本当の気持ちを……熟睡している彼はきっと知らない。
だから、今だけ。私の気持ちをのせて。
「レイ様が好き。大好き」
レイ様の寝顔を見つめながら、そして、吸い寄せられるように彼に口づけました。
重ねた唇はほんの刹那。シトラスの香りが鼻を掠めていきました。
大それたことをしてしまったと気づいた時には唇を重ねたあと。
柔らかな感触がいつまでも私の唇に残っていました。