婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
ビビアンside④
「今、なんとおっしゃいました?」
お父様の執務室。
重厚な机と精緻な彫りが施された椅子。硝子戸の本棚には専門書がずらりと並んでいる。その一角にテーブルと椅子が配置されている。
お父様に呼ばれてきてみればお母様の姿もあった。
物々しい雰囲気に予感めいたものを感じ取り、心を浮き立たせたのも束の間。予想だにしなかった話がわたくしの耳に飛び込んできた。
「ロジアム侯爵家との縁談の話が来ている。相手は三男のトーマス・ロジアム。騎士団所属の将来有望な騎士だそうだ。とても良い縁談だと思うがどうだ?」
「三男で騎士? それが良い縁談なのですか?」
縁談だと聞いて、てっきりレイニー殿下とのお話だと思ったのに。
蓋を開けてみれば、格下の侯爵家。