婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「なぜだね。何が気に入らないのだね」
「なぜ? 侯爵家の三男なんて結婚する価値がありませんわ。わたくしは公爵家の娘。もっと相応しい縁談があると思うのですわ」
「相応しい、か。侯爵家の三男では釣り合わないと思っているのかね」
「当然ですわ」
ここはキチンと主張しておかないと丸め込まれてはたまらない。
わたくしは自信たっぷりに言った後、紅茶に口をつけた。
カップの取り方、飲み方、ソーサーに戻す仕草さえも完璧に計算されつくした優雅なもの。たった一つの所作だってどれほどの努力で身につけたものなのか、お父様に見せてあげたいくらいだわ。
「しかしな。トーマス殿は騎士団の中でも出世頭、将来有望だと聞いている。第一騎士団長のユージーン殿下の親友であり片腕。殿下が将来、騎士団の総帥の座についた際の幹部候補でもある。それだけでも十分に価値はあると思うのだがな」