婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「ここだけの話だが、レイニー殿下には心に決めた令嬢がいらっしゃるそうだ」

 心に決めた? まさか……フローラ?
 
 思い出したくもない顔が咄嗟に浮かぶ。
 でも、違うかもしれないと思い直して、浮かんできた顔を振り払った。

 一縷の望みをかけて聞いてみる。

「その令嬢とは、どなたなのですか?」

「名前は明かされなかった。まだ発表する段階ではないようでな、もうしばらく待ってほしいとのことだった。両陛下もご存知のようだから、我々は報を待つより他はない」

「それならば、わたくしかもしれないのでは?」

 そうよ。
 名前がわからないのであれば、自分の可能性だってあるのではないかしら。
 だったら、早々に結婚相手を決める必要もない。せめて、名前が明かされるまでは猶予があるはずよ。わたくしにもチャンスはあるわ。


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