婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「ユージーン殿下も優秀な方だけれど、ロジアム侯爵家のトーマスさんも文武両道で、とても優秀な騎士だそうよ。上司や部下からの信頼も厚くてみんなに慕われているんですって。その上に眉目秀麗な美丈夫なのだとか」

「……」

 すでにレイニー殿下から鞍替えしたのか、お母様は前のめりに話し出す。

 なんとか、縁談相手に興味を持ってもらおうと必死な様子に心が冷えていく。
 お母様の中ではレイニー殿下は影も形もないのでしょうね。すっかり忘れ去られているわ。

 わたくしは冷めた目でお母様を見てカップを手に取った。
 
「美丈夫ですか。わたくしは見たこともないので、何とも言えませんわ」

「そうよね。実はね、絵姿をもらってきたのよ。ちょっと見てみない?」

 どこに隠していたのか、豪華な額装の肖像画がスッと目の前に差し出された。

 用意周到ね。

 昨日の今日よ。
 もしかして、すでに手元にあったのかしら。

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