婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「おいたわしい。なぜ、お嬢様がこんな目に合わなければいけないのでしょう。愛し合っているお二人を引き裂くような結婚なんて」

 わたくしの前で崩れ落ちるように膝を折って、涙をこぼすエマを優しく抱き寄せる。

「エマだけよ。わたくしの気持ちをわかってくれるのは。あの侯爵家も有数の資産家ですものね。仕方がないわ」

 暗に原因はあちらの方にあるのだとちらつかせる。

 わたくしは意に染まぬ結婚。フローラは恋愛でレイニー殿下と結ばれる。この違い。
 何かのせいにしなくては納得できない。

「そんな……権力を使ってお嬢様の恋を踏みにじるなんて。そんな非道がまかり通るなんて」

 悔しさを露わにするとエマの頬に幾筋もの涙が流れ落ちる。

 資産家である侯爵家が圧力をかけて主人の恋路の邪魔をする。しっかり出来上がった筋書きに憤慨しわたくしに同情するエマ。

 フローラを悪役令嬢に仕立て上げた物語は終盤を迎える。

< 508 / 835 >

この作品をシェア

pagetop