婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 こんな光景を見るために学園に来たわけではないのに。
 苦痛でしかないこんな場面、すぐに立ち去ってしまいたいのに、わたくしは地面に縫い留められたように動けない。

 悔しさと虚しさと嫉妬が交差する胸の内、誰かわかってくれるだろうか。

 ずっと、思い続けた恋しい人が別の女性と寄り添っている姿なんて誰が見たいと思うの。
 ギュウと締め付けられるような胸の痛み。泣き叫びたくなる衝動を抑えるために、皮膚に食い込むくらいに強く握りしめた手。
 
 フローラは殿下の乗った馬車を見送るとディアナと共に歩き出した。

 待ち構えたように周りに集まる生徒達。

 たちまち生徒達に囲まれたフローラは頬を染め照れくさそうに微笑みながらわたくしの前を通り過ぎていった。どんなに睨みつけても、意に介さずわたくしのことなど眼中にないとばかりに。


< 590 / 835 >

この作品をシェア

pagetop