婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
そんなことを考えて感傷に浸っているとコンコンとドアを叩く音がして
「お嬢様、よろしいでしょうか」
執事のヨハンの声がした。
珍しい。
ヨハンはお父様付きだから、わたくしの部屋には滅多に訪れないのに。
顔を出したヨハンが告げる。
「お嬢様、旦那様よりエマと一緒に至急一階の応接室へ来るようにとのことでございます」
「エマも?」
「はい。お客様がいらっしゃっております。それから、華美な服装ではなく、控え目な服装でお願いいたします」
神妙な面持ちで簡潔に告げたヨハンは頭を下げて部屋を去って行った。取り付く島もなく残されたわたくしとエマ。
お客様って誰なのかしら? 控え目な服装?
肝心なことは伝えられず、疑問符が浮かんだけれど、ボーとしてはいられない。とにかく支度し直さなければ。
何が何だかわからないまま、わたくしたちは応接室に向かった。