婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「エマ・ウィルソンだね」
目の前まで近づいた騎士達。エマの顔にスッと影が差して、名前を呼ぶ声がした。
「えっ……あ、い、やっ……」
追い詰められてしゃべることさえできぬほどガタガタと震えるエマの身体。
「連れていけ」
冷然な声が響き、若い騎士達がエマの両脇を抱えて身体を起こして立たせた。支えられてやっと足を地につけるエマ。
「い、いや。わ、わたし、は……」
引きずられるように連れていかれるエマをどうすることもできない。
お父様達は成り行きを見守っているだけ。
何が起きているのかさえ把握できていない。何をどうすればよいのか……
「お嬢様……」
部屋から出て行く瞬間、振り返って助けてと言わんばかりに、すがるような悲愴な目でわたくしを見たエマ。
黙って連れ去られるのを見ることしかできなかったわたくし。今のわたくしに何ができたのだろうか。