婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
♢♢♢♢♢♢
十日経った頃。
「先程、呼び出しがあってね。お父様は登城しているわ」
学園から帰ってくるとお母様が玄関で待っていて、開口一番にわたくしに告げた。
今日はお父様はお休みだったのに呼び出されたのね。きっと、エマの件よね。
「もう少ししたら、エマを連れて帰ってくるわね。よかったわ」
久しぶりに見たお母様のにこやかな笑顔。
「ええ。わたくしも嬉しいですわ」
二人で微笑み合うと紅茶を飲んだ。
美味しいと感じたのは久しぶりだわ。
一緒に出されたケーキが美味しそうに輝いて見える。
ケーキに手を伸ばして頂くとこれまた美味しい。ケーキって甘かったのね。
味覚を取り戻したわたくしはぺろりとケーキを平らげてしまった。
そんなわたくしを見てお母様が「子供みたいね」ってコロコロと笑っていた。
淑女らしからぬふるまいではあったけれど、叱られることはなかったわ。それよりも喜びが勝っていたから。