婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 正体のわからない何かが怖くてギュッと目を瞑ると

「目を開けて」

 その声と同時に頬を両手で包み込まれ、柔らかな声に警戒心を解いて目を開くとあいかわらずレイ様のドアップ。

「覚えているよね? 俺に何をしたか。ちゃんとセリフを覚えているんだから」

「……」

 後ろめたさが先に立ち何も言えません。 
 あの日、私が何をしたのか。この様子だと不問にはして下さらないのよね?

 レイ様、寝ていたのではなかったの? 
 眠っていると確信したから、あんな大胆な行動ができてしまったのに。
 微動だにしなかったから、すっかり騙されてしまったわ。今になって後悔しても遅い。

 逃がさないとばかりに鋭くなる視線。
 そこには情欲の色さえ滲ませた瞳に背中がゾクゾクしてきて、まるで猛禽類に狙われている小動物のよう。 
 
 ぷるぷると震えながら、ドアップの顔のあるパーツに自然と目が向いてしまいました。
 今でも触れた感触が残っている唇に。

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