婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「どこ見ているの?」

 私の視線の先を感じ取ったのかニッと笑みを深めたレイ様。
 見透かされているのを認めたくなくて

「どこも、見ていませんけど」

 ごまかしてみたけれども説得力はないわ。声が震えて視線が泳いでしまったもの。

「そう? で、あのあと、ローラは何をしたんだっけ?」

「えーと。何も……」

 首の両脇に手を置かれて逃げるに逃げられない状況。
 あれを再現するのはハードルが高すぎる。

 こんな見え透いた言い訳さえも面白いというように私を見下ろすレイ様に、何とかこの状況から逃げ出そうと考えてみるものの、いい案なんて思い浮かぶはずもなくて。

「まだ、とぼけるの?」

「これ以上は、もう……」

 蛇に睨まれた蛙のごとく、動けない。ジリジリと追い詰められていく獲物みたいだわ。いつもは甘くて優しいレイ様なのに……涙が滲んできたみたい。

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