婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「しょうがないなあ」

 仕方なさそうでいて愉悦を含んだレイ様の声がしたと思ったら、ゆっくりと抱き起されました。顔を覆っていた両手もはがされて

「ローラの顔、真っ赤」

 クスリと笑ったレイ様をまともに見ることができなくて、下を向くとレイ様の手が伸びてきて膝に置いていた手に触れたと思ったら、私の指を自分の唇に持ってきました。

 柔らかい唇の感触にビクッと指が震えて咄嗟にひっこめようとしたけれど、強く掴まれた手を振りほどくことはできません。

「覚えてる?」

「あっ……」

 レイ様の唇を私の指がなぞっていく。自分の意思ではないのに。
 滑らかで柔らかな感触が指に伝わって体の奥がきゅんと締めつけられる。自分の唇を触ってもなんともないのに。
 どうして?


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