婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「アンジェラ様。お願いです。ここから出して頂けないでしょうか。わたくしには身に覚えのないこと、ここに閉じ込められる謂れなどございません。どうかお助け下さい」

 わたしの後ろにいたアンジェラの姿に気が付いたのか、胸の前で指を組み頭を下げて殊勝に懇願していた。

 こういう時は目ざといのね。感心するわ。

「わたくし、あなたにわたくしの名前を呼ぶことなど、一度たりとも許可していないわ」

 冷めた目でじっと見ていたアンジェラが口を開く。
 地の底を這うような極寒の冷気を纏った冷淡な声と冷然とした態度にビビアン様が震えあがった。

 普段、朗らかで人当たりの良い人が怒ると怖さ倍増よね。しかもそれが王太子妃ともなれば効果は絶大。
 ビビアン様は機嫌を損ねては不利になるとふんだのだろう。即座に土下座をして謝った。

「申し訳ございません。王太子妃殿下」

 土下座をしたとて、床はふわふわの絨毯のおかげで足が痛くなることもドレスが汚れることもない。


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