婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「この部屋の居心地はどうかしら?」

 冷たい瞳でアンジェラは微笑んでビビアン様に問う。
 土下座をし頭を下げ続ける彼女の肩がピクリと動く。

「……」

 罪人扱いの待遇に答えを窮する姿をわたしは興味津々に見つめる。

「顔を上げてちょうだい。何か不満でもあるのかしら?」

「いえ……何もございません」

 ビビアン様は真っ青な顔でアンジェラを見上げた。

「よかったわ。ビビアン嬢は公爵令嬢ですものね。その爵位に相応しく何もかも別格なのよ。こちらの部屋も特別にあなたのために改装したものなの。気に入ってもらえるなんて、頑張った甲斐があったというものね」

 扇子で口元を隠して笑っていない目でにっこりと笑うアンジェラ。その扇子、少しひびが入っていないかしら?

 なんと答えていいのか分からずビビアン様の表情が強張っていく。

 自分のために改装したと言われても所詮は貴族牢。居心地は良くても罪人扱いであることは変わらない。

 今回の件で一番怒っているのはアンジェラかもしれないわね。

 誘拐未遂事件を知って激怒した彼女を宥めるのに苦労したもの。気持ちはわたしだって同じ。懐に入れた大事な宝物を傷つける輩を許せるほど、わたしたちは寛容ではないのよ。

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